カテーテル関連感染症は、PD関連腹膜炎の主な原因である。カテーテル感染症の予防および治療における主な目的は腹膜炎を予防することである。
Perit Dial Int 2017; 37(2): 141-154
出口部の構造および出口部感染の発症機序
正常な出口部
丹野有道、2011、「腹膜透析療法マニュアル」、東京医学社、P174-180
創部安定期では、皮下組織の創面が皮膚および皮下(外部)カフをつなぐ結合織としてカテーテルを覆うことになります。出口部近傍の健常皮膚組織がバリア機能を保持し、かつ、皮下カフと強固に結合することにより、細菌の侵入を防止できることが理想的です。しかし、長期間の経過とともに表皮のダウングロースが発生してカテーテル周辺にポケットを形成し、sinus内への落屑組織の蓄積は感染の温床となりやすいため、移行部が傷ついた時に備えて、清潔に保っておく必要があります。
出口部~皮下トンネル部の組織
丹野有道、2011、「腹膜透析療法マニュアル」、東京医学社、P174-180
体表部は皮膚組織であり、健常な扁平上皮に覆われてバリアとしての機能を有しています。皮下トンネル部はcollagen線維を主体とする強固な結合組織を形成し、カテーテル周囲から皮下カフヘと連なっており、いずれも細菌の侵入門戸としては容易でないことが推察できます。ところが、sinus入口部直下に位置する皮膚組織から皮下トンネル結合組織への移行部は比較的脆弱なので、このようにsinusがいかに強固な結合織で覆われたとしても、移行部からの細菌侵入を完全に防御することは困難といえます。
不安定なカテーテルの固定などによる機械的損傷や消毒薬などによる化学的損傷により、脆弱な移行部の構造的破綻が生じ、次いで同部から不良肉芽が形成されて細菌の侵入が容易となり、出口部感染へと進展するものと考えられます。移行部は傷つきやすく感染しやすいことを念頭において、出口部感染の引き金となる移行部の構造的破綻を防ぎ、健全な状態の移行部をいかに維持するかがポイントになります。移行部の損傷を防ぐために愛護的に扱い、損傷によりバリア機能が破綻した際に細菌が侵入するリスクを少しでも低減するために、出口部周辺を清潔に保っておくことが大切となります。
出口部損傷予防
1.カテーテルを圧迫したり引っ張られたりすることを極力避ける
- 出口部ケアやバッグ交換時に引っ張られないようにする
- 出口から自然に出ている方向に固定する
- カテーテルのねじれは真っ直ぐにもどす
- 固定する時はカテーテルを引っ張り過ぎない
- 痂皮(crust や scab)を無理に取り除かない
2.出口にかかる圧力を最小限にする
- ベルト・シートベルト・衣服による圧迫が加わらないように注意する
- 圧迫されにくい位置に出口部を形成する
- 腹臥位で寝ない
- 出口のトラブルに備えて、できるだけ早めに教育する
3.石鹸や消毒液等に対するアレルギーや刺激に注意する
4.絆創膏や粘着剤による刺激を避ける
5.出口を掻いたりつついたりしない
丹野有道、2011、「腹膜透析療法マニュアル」、東京医学社、P174-180