腹膜透析(PD)

腹膜透析(PD)

末期腎不全における療法選択

事例紹介Vol.3

腎不全治療の療法選択支援における Shared Decision Making(SDM)の実践

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Vol.3国家公務員共済組合連合会 呉共済病院

  • 川岡孝一郎先生

    腎臓内科 部長
    川岡孝一郎先生

  • 山本京子さん

    内科外来 主任
    山本京子さん

  • 高橋智美さん

    内科外来
    高橋智美さん

創立110年を超える歴史を持ち、広島県呉市の基幹病院として地域住民を支える呉共済病院。腎不全の治療においては、2018年に「療法選択支援外来」を立ち上げ、腎代替療法の説明および患者の意思決定支援を行っています。
<DATA>
年間透析導入数:約70例
維持外来血液透析患者 約60名・腹膜透析患者 約30名

 

「療法選択支援外来」

 保存期患者の診療は、腎臓内科の5名の医師により行われており、末期腎不全の治療が必要となる患者に対しては、「療法選択支援外来」の受診を勧めています。「療法選択支援外来」は2018年6月に開始。一般外来所属の2名、血液透析室所属の1名、計3名の看護師が担当し、それまで一般外来の中で主に医師から行われていた療法説明を、医師、看護師、患者の『三者面談』の形で行い、生活背景も含め、患者に合った治療の選択を支援しています。

 

●実践ポイント(1):看護師の事前スクリーニング

 保存期患者の外来受診前日、看護師が前回の検査データを確認し、そろそろ腎代替療法が必要となりそうな患者をピックアップ。その患者の外来には、「療法選択支援外来」を担当している高橋さんができるだけ立ち会い、医師に「(療法選択用の)冊子を渡しますか?」と確認する。医師が当日の検査結果や診療歴・病気の進行速度などから総合的に判断し、必要と思われる患者に冊子を渡し、「療法選択支援外来」の日程調整を行う。多忙で時間が限られる医師の外来診察において、この看護師によるスクリーニングが、「療法選択支援外来」を適切なタイミングで受けてもらう工夫の一つとなっている。

 

●実践ポイント(2):『三者面談』形式

 同院では、「療法選択支援外来」を週2回、一般外来が終了した後の午後に設定し、医師・看護師・患者(および患者家族)の『三者面談』の形で行っている。三者が一緒に話をすることで、同じ情報を容易に共有できるメリットがある。主治医がPD治療未経験の若手医師の場合には、患者や家族からの具体的な質問にその場で対応できるよう、主治医と共に腎臓・透析専門医も同席している。また、看護師は3名の同外来担当で患者担当制をとり、都度1名が面談に参加する。しかし、看護師3名はそれぞれ得意分野(HD、PD、移植)を持っているため、患者が興味を持った治療については、後日担当以外の看護師が説明を追加するなど、患者の関心に応じて協力し合いながら支援を行っている。

 

●実践ポイント(3):ツールの活用

 治療法の理解を深めてもらうためのツールとしては、5学会作成の「腎不全 治療選択とその実際」冊子を、患者の生活背景や価値観の把握には「あなたに合った治療法を選ぶために(腎臓病SDM推進協会発行)」を使用している。書き込み式の冊子は当日までに記入してくるよう声をかけて事前に渡し、当日の待ち時間に看護師が記入内容を確認する。年齢や家族構成などの基礎情報は記入できていても、細かい生活状況や希望・思いなどは空欄のことが多く、この時間に看護師が口頭で確認しながら追記し、『三者面談』へと臨む。話を聴きながら記入していく方がわかりやすいこともあり、空欄が多いことが必ずしもマイナスではないと感じていると言う。
 「療法選択支援外来」では、医師から治療法に関する詳しい説明が行われた後、この冊子を見ながら患者の生活状況などを共有。『HDならこの日は治療があるのでこのような生活、PDならこの時間帯・・』など、生活表と照らし合わせながら、具体的に個々の生活の中で治療がイメージしやすいように説明している。また、面談の記録には、その時の患者の気持ちや様子も書き込んでいる。
 「療法選択支援外来」後、この冊子は病院が預かり、次回外来時にまた使用する。

 

療法選択までの流れ

 

●実践ポイント(4):フォローは一般外来で

 「療法選択支援外来」の担当看護師が一般外来に所属しており、同外来の後、次回の一般外来受診時に採血検査結果待ちの時間を利用して、看護師が面談を行っている。病院で預かっていた書き込み後の冊子を見ながら、わからなかった点はなかったか、家に帰って考えてみてどう思ったかなどを聞き取り、冊子に追記をしていく。内容が更新された状態の冊子は医師に渡され、医師の手元に最新の情報がある状態で診察が行われる。
 その後も定期的に同様のフォローが行われ、毎回冊子に書き込まれる面談内容で患者の気持ちの変化も「見える化」し、医師・看護師・患者の情報共有を図りながら、患者が希望する治療を導入できるよう社会資源の調整も含め支援している。患者が最終的にどの治療にするか意思決定をした時点で、患者に冊子に署名をしてもらう。

 

療法選択にあたって使用するツール

 

「腎臓病あなたに合った治療法を選ぶために」の使用方法

 

これまでの課題と取り組み

 現在は、保存期から同院を受診している患者さんのほぼ全員が「療法選択支援外来」を受診後に腎代替療法を開始しているという同院。2018年の立ち上げ時から、数々の取り組みを重ねてきました。

 

1)療法選択支援の必要性を感じ、セミナーに参加

 2018年度の診療報酬改定でPDおよび移植推進の方向性が示されたこともあり、患者により広い選択肢を提供する必要があると考えたという川岡先生。「腎臓病SDMセミナー ベーシックコース」(腎臓病SDM推進協会主催)に参加した。このセミナーへの参加が「療法選択支援外来」の立ち上げのきっかけにもなったという。セミナーで紹介を受けた書き込み式冊子も現在活用している。
 「セミナーに参加して、SDMの重要性、また、世の中の流れも感じました。冊子を使って患者さんに書いて考えてもらい、時間をとって生活背景を聞く中で治療の選択肢も広がっています」(川岡医師)
 「SDMやPD関連のセミナーに参加して勉強しました。セミナーの内容に加えて、グループワーク等で他の施設の方から話を聞けたことも大変勉強になりました」(高橋看護師)

 

2)CKD教育からの仕組みを見直し

 以前は、治療の選択にあたって、導入間近になってからの説明となることが多く、患者に十分な知識や受け入れの時間を与えることができていない状態になることが課題であったと言う。そこで、「療法選択支援外来」だけでなく、腎臓病患者を保存期〜末期腎不全まで段階に応じて支援する必要があると、CKDステージに合わせた腎臓病教室や教育入院のパスを作り、内容の見直しも行った。
 「多職種で毎週行っている腎臓カンファレンスで、部長の川岡先生からその構想が共有されました。それを受けて、全体の流れを見直し、それぞれのスタッフが具体的に支援体制を作る方向に動きました」(山本看護師)

 

3)療法選択支援外来への紹介時期

 「療法選択支援外来」を立ち上げた頃は、医師のみの判断で同外来への紹介を決定しており、多忙で時間が限られる中、腎代替療法が必要となるぎりぎりのタイミングでの紹介となるケースもあった。そこで、一般外来所属の同外来担当看護師が、外来受診予定患者の前回の検査データをスクリーニングし、医師に声かけを行うこととした。最終的な紹介時期は個別の状況を見て医師が判断するが、当初、血清クレアチニン平均6.4程度だった紹介時期が、看護師のスクリーニング開始後は平均5.5程度へと早まっている。
 「患者が十分な知識を持ち、受け入れの時間を持ってもらうためには、より早期の介入が必要と考え、看護師が先生に声をかけさせてもらう取り組みを始めました。当院に保存期から通院する患者さんはほとんどこの外来を受診してもらうようになり、昨年はこの外来を受診した患者さんからは緊急導入が無くなりました」(高橋看護師)

 

4)取り組みをまとめて学会で発表

 このような看護師の取り組みに関して、その活動と成果をまとめ、第25回日本腹膜透析医学会学術集会にて発表を行った。発表を行うために、データを整理しまとめることは、活動を評価し、次の課題を見出すことにもつながっている。また、療法選択支援の活動に理解を示してくれている看護部への報告としてもよい機会となったと言う。
 「SDMは腎不全の治療選択に限ったことではないので、他の臨床の場にも活かしたいです。一般外来を担当している立場ですので、院内でSDMを広める役割を果たしたいと思います」(山本看護師)

 

 同院のある地域では、CKDの概念が徐々に浸透してきたことにより、かかりつけ医からの紹介時期が早くなりつつあると言います。さらに緊急導入や透析導入間際での紹介が減り、より多くの患者さんが医療従事者と一緒に治療を選べるよう、同院の病期に応じた患者支援体制のさらなる利用が期待されています。

 

療法選択支援への課題と対策

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