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腹膜透析(PD)

末期腎不全における療法選択

事例紹介Vol.2

腎不全治療の療法選択支援における Shared Decision Making(SDM)の実践

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Vol.2独立行政法人国立病院機構災害医療センター

  • 河﨑智樹先生

    腎臓内科 医長
    河﨑智樹先生

  • 吉盛友子さん

    血液透析・血液浄化室
    吉盛友子さん

東京都の北多摩西部地区の医療拠点として100万人の地域の人々を支える高度救急病院である災害医療センター。腎不全の治療においては、一時診療を休止していた腹膜透析(PD)の診療を2018年に再開。それに伴い、「療法選択外来」を立ち上げ、看護師による腎代替療法の説明および患者の意思決定支援を行っています。
<DATA>
年間透析導入数:約40例(緊急導入率 約25%)
維持血液透析は導入期および入院患者のみ対象

 

「療法選択外来」

 保存期患者の診療は、腎臓内科の外来にて4名の医師により行われており、医師が患者の状態を見極めながら、末期腎不全の治療が必要となる患者に対し、「療法選択外来」の受診を勧めています。「療法選択外来」は血液浄化室の看護師2名が担当。1回の面談は約1時間。2018年7月の立ち上げから2019年末の1年半の間に約50名の患者が受診しています。

 

●実践ポイント(1):患者が自身で病気を受け止める機会を作る

 療法選択外来において、患者が自身の状況を受け止める機会を作ることを大切にしていると言う同施設。治療法の詳しい説明を始める前に、まずは、患者が疾患のことや、腎不全になってしまったその状況を自身で理解できているか、受容できているかを確認している。面談の中で患者の言葉を傾聴し、「こう思っていたんですね」と、改めて自分の気持ちに気づいてもらう問いかけなどをしながら、自身の状況を受け止める機会につなげている。

 

●実践ポイント(2):ツールの活用

 治療法の理解を深めてもらうためのツールとしては、5学会作成の「腎不全 治療選択とその実際」冊子を使用。事前に「読んでおいてもらえると話がわかりやすいですよ」と声をかけて医師から渡しており、半数ぐらいの患者は実際に読んで参加している。PDについては治療のイメージを持ってもらうことが難しいため、お腹のチューブを装着したぬいぐるみを作成した。「このぬいぐるみを自分だと思って持ってみて」と、ぬいぐるみを抱えてもらい、どのようにお腹からチューブが出ているのかを疑似体験してもらっている。

 

●実践ポイント(3):療法選択外来に来るハードルを高くしない

 患者の生活背景や価値観の把握には「あなたに合った治療法を選ぶために(腎臓病SDM推進協会発行)」や「腎不全とその治療法(NPO法人腎臓サポート協会)」を使用している。書き込み式のこれらの冊子は、事前に患者に渡し、当日までにできる範囲で書き込んでみてもらうよう声かけをしている。しかし、「必ず書いてくる」とすると、患者にとって、療法選択外来を受診すること自体のハードルが高くなってしまうのではないかと考え、書き込みを強く促すことはしていない。記入できない場合はそのまま療法選択外来に持参してもらい、当日、看護師が話を聴きながら一緒に書いていくようにしている。「話を聴きながら一緒に書き込む」ことで、患者の理解につながっていると言う。

 

療法選択までの流れ

 

●実践ポイント(4):療法選択外来の場所の確保

 同院では、透析室の一角をパーテーションで区切ったスペースにて療法選択外来を行っている。患者の背景など個人的な話も聞くため、個室での実施が理想的ではあると考えているものの、現状では部屋の確保が難しく、透析室内での実施となっている。しかし、パーテーションで区切られていてオープンなスペースではないためか、患者が話しづらそうにしていることは特に無いと言う。また、透析室の中で行っていることにより、患者からの質問を受けた場合に必要に応じてすぐに医師に確認することができ、さらに、療法選択について自然に他の看護師に知ってもらう機会になるというメリットも感じている。

 

●実践ポイント(5):医師との情報共有

 「療法選択外来」終了後は、医師に療法選択外来での患者の様子や選択した療法について口頭で情報共有を行っている。その情報を踏まえて、次回の一般外来で医師が患者と再度話をして治療法の決定へと向かっていく。
 また、一回の療法選択外来で治療に対する理解が進まなかったり、治療法の決定に至らなかったりした場合には、看護師から次回の療法選択外来の調整を医師に依頼。患者によっては治療法の決定までに複数回、療法選択外来を受診している。

 

療法選択にあたって使用するツール

 

療法選択外来開始までの取り組み

 以前勤務していた施設での経験から、看護師が時間をとって患者と話しをすることの効果を実感していたという河﨑智樹先生。治療選択の幅が広がることだけでなく、医療スタッフと患者との信頼関係が深まり、実際、一般外来でほとんど自分のことを話さなかったような患者が、療法選択外来を経た後、よく話すようになったり考え方がポジティブになったりする例も珍しくはないと言います。また、腎代替療法が近づいていることを実感した患者の自己管理が向上するためか、GFRの低下速度がゆるやかになる傾向もみられるそうです。
そこで、2018年4月に同院へ赴任された後、すぐに療法選択外来の立ち上げを計画しました。

 

療法選択外来によって期待される効果

●医療スタッフと患者との信頼関係の向上

  • 患者側からの情報が増える(よく話すようになる)
  • 患者の考え方がポジティブに変化 など
●CKDの進行抑制の期待
  • 患者にとって腎代替療法が現実味を帯びることで、自己管理の向上につながり、GFRの進行速度がゆるやかに
●腎代替療法の選択の幅が広がる(PDや移植の選択率向上)

 

(河﨑医師の経験より)

 

1)まず選択できる治療選択肢を増やす

 一時、PDの診療を休止していたため、まずは、PD診療の再開から取り組んだ。河﨑先生の働きかけに、外来からも病棟からも腎代替療法の選択肢が広がる有意義な取り組みであるとの理解を得られ、PD再開への準備が進められた。同時に、患者に適切な治療を選択してもらうには、療法選択外来が必要であることを、将来的な診療報酬の可能性も含め外来師長に働きかけ、透析看護認定看護師(吉盛さん)の協力について快諾を得ることができた。  「診療体制全体を見直していた時期でしたので、療法選択外来もその一つとして立ち上げました。外来師長も『患者さんのためになるのであれば』と理解してくれたのが大きかったです」(河﨑医師)

 

2)他施設への見学

 療法選択外来の開始に先立ち、担当となる看護師が、河﨑先生が以前勤務していた施設に見学に出向いた。そこで、療法選択外来に立ち会い、実際の様子を見学。また、施設で使用している資料を共有してもらい、参考にしたと言う。
 「先生から療法選択外来のことを聞き、ぜひやってみたいと思いましたが、経験も情報もなかったので、見学に行かせてもらいました。この見学があったから今があると思います」(吉盛看護師)

 

3)1名体制から2名体制へ

 立ち上げ時、療法選択外来の担当は1名のみ。その後複数体制にできるよう、他のスタッフに声かけを行っていた。興味を持ってもらえても実践まで至らないことが多い時期が続いていたが、立ち上げから1年弱が経った頃、透析室に勤務する看護師が積極的に関わってくれるようになり、現在は2名体制となっている。PDについては未経験であったため、院内勉強会や外部での研修参加で理解を深めてもらった。その後、2人で一緒に面談を行い療法選択外来について慣れてもらい、現在は一人で面談を担当するに至っている。
 「透析室で面談を行っているので、どんな説明をしているかを見てくれていて、興味を持ってくれたようです。個室が確保できていないことが、逆に良かったのかもしれません。さらに担当できる看護師を増やせるように、自分が参加するセミナーに誘うなどしています」(吉盛看護師)

 

 療法選択支援の今後の課題については、SDMが実施できているのかの評価、PDを高齢者でも選択しやすいサポート体制の構築、移植の説明の強化に加え、より早い段階での療法選択外来の受診紹介を挙げる同院。自治体、かかりつけ医、地域の薬剤師等との連携など、急性期病院の機能を持つ同院だけでは対応できない慢性腎臓病対策に、地域で対応する取り組みも開始しています。

 

療法選択支援への課題と対策

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