1.腹膜の構造

腹膜は、腹腔を覆う壁側腹膜と腸管とその他の内臓を覆う臓側腹膜からなる薄い漿膜であり、この膜を透析膜として腹膜透析(以下PD)を施行します。面積は体表面積にほぼ等しく成人で1.5~2.0m2と言われており、臓側腹膜は総腹膜面積の60~80%を占め、総腹膜の血流量は50~100ml/minです。
腹膜に囲まれた腔が腹腔であり、女性で卵管開口部が交通している以外は完全な閉鎖腔となっています。
腹膜の組織
腹膜は、たくさんの微絨毛を持つ一層の中皮細胞で覆われた腹膜上皮と血管の間にある脂肪組織、線維成分により形成される間質で構成されています。従って、腹腔と血管腔との交通は腹膜上皮、間質、血管壁を通過して行われることになります
腹膜の働き
腹膜は覆っている内部臓器の動きを滑らかにし、また保護する作用がある他、生体膜として浸出、漏出、分泌などの生理作用があります。腹腔内には約50~100mLの漿液が存在し、これが潤滑油的な働きを果たすと同時に感染時の防御機構となっています
血液供給
臓側腹膜は腹腔動脈と腸間膜動脈から血液供給を受け、静脈系は最終的には門脈に収束します。壁側腹膜は腹壁の血管から血液供給を受け、その血流の大部分は下大静脈へ流入します
物質吸収
腹膜からの物質の吸収は、血行性とリンパ行性に二分され、水・電解質・ブドウ糖などは血行性に、脂肪・膠質・不溶物質等はリンパ行性に吸収されます