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領域別情報

腹膜透析(PD)

PDに伴う合併症(感染症)

2 - 4.PD腹膜炎の実際の治療 2)

ISPD腹膜炎ガイドライン2016より抜粋

 

2)初期治療後に引き続き行う腹膜炎の治療について

  • 本委員会は抗菌薬による治療は培養結果と感受性が判明した後に、必要に応じてより特異的なスペクトルの薬剤を使用することを推奨する(1C)
     

PD排液中にグラム陽性菌が陽性時の管理アルゴリズム

図2

 

排液中にグラム陰性桿菌、または複数菌が同定された場合の管理アルゴリズム

図3

 

難治性腹膜炎

  • 本委員会は難治性腹膜炎とは適切な抗菌薬を使用して5日経過してもPD排液の混濁が消失しない腹膜炎として定義される。難治性腹膜炎においてはPDカテーテルを適切に抜去することを推奨する(1C)

 

再燃性、再発性、および反復性腹膜炎

  • 本委員会は腹膜炎の経過が再燃性、再発性、または反復性である時には適切なタイミングでカテーテルの抜去を考慮することを勧告する(1C)

腹膜炎に関する用語

再発性
(Recurrent)
前回の腹膜炎の治療完了後週間以内に発症する腹膜炎で病原微生物が前回と異なっているもの
再燃性
(Relapsing)
前回の腹膜炎の治療完了後週間以内に発症する腹膜炎で病原微生物が前回と同一か、もしくは菌が検出できない場合
反復性
(Repeat)
前回の腹膜炎の治療完了後週間以上経過した後に発症した腹膜炎であり病原微生物が前回と同じ微生物である場合
難治性
(Refractory)
適切な抗菌薬を投与しているにもかかわらず5日間経過した後でも排液の混濁が消失しない場合
カテーテル関連腹膜炎
(Catheter-related peritonitis)
腹膜炎の原因菌と同じ微生物が検出されるESIまたはトンネル感染を合併する腹膜炎と定義されるが、出口からは微生物が検出できない場合もある

注釈:再燃性腹膜炎のエピソードは腹膜炎発症率を計算する時に、別のエピソードとして数えるべきではない。しかし、再発性や反復性は数えるべきである。

 

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌性

  • コアグラーゼ陰性ブドウ球菌は抗菌薬の感受性に従って、一般的にはセファロスポリン系抗菌薬またはバンコマイシンの腹腔内投与で2週間治療することを推奨する(2C)

 

腸球菌種

  • 本委員会は腸球菌による腹膜炎はバンコマイシンの腹腔内投与で3週間治療することを推奨する(2C)
  • 本委員会は腸球菌による重症腹膜炎にはアミノグリコシド系抗菌薬の腹腔内投与を追加することを推奨する(2D)
  • バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)による腹膜炎に対しては、もし感受性があればアンピシリンの腹腔内投与を3週間行う。または、アンピシリン耐性であれば代替えの抗菌薬(リネゾリド、キヌプリスチン/ ダルホプリスチン(配合剤)、ダプトマイシン、またはテイコプラニンを薬剤感受性により選択)で同様に治療することを推奨する(2D)

 

連鎖球菌種

  • 本委員会は連鎖球菌による腹膜炎は例えばアンピシリンの腹腔内投与のように適切な抗菌薬で2週間治療することを推奨する(2C)

 

黄色ブドウ球菌

  • 本委員会は黄色ブドウ球菌による腹膜炎は有効な抗菌薬治療を3週間継続することを推奨する(2C)

 

コリネバクテリウムによる腹膜炎

  • 本委員会はコリネバクテリウムによる腹膜炎は有効な抗菌薬で3週間治療することを推奨する(2C)

 

緑膿菌による腹膜炎

  • 本委員会は緑膿菌による腹膜炎は異なった作用機序を持ち、かつ感受性のある2種類の抗菌薬による治療(例えば、ゲンタマイシンによる腹腔内投与またはシプロキサシンによる経口投与と、セフタジジムまたはセフェピムによる腹腔内投与の併用)を3週間行うことを推奨する(2C)
  • 本委員会はESIとトンネル感染を伴う緑膿菌による腹膜炎はカテーテル抜去を行うと共に抗菌薬治療を行うことを推奨する(2D)

 

その他のグラム陰性菌

  • 本委員会は非緑膿菌性グラム陰性菌による腹膜炎は少なくとも3週間有効な抗菌薬で治療することを推奨する(2C)

 

複数菌による腹膜炎

  • もし、複数の腸内細菌(複数のグラム陰性菌、もしくはグラム陰性菌とグラム陽性菌の両方)がPD排液から培養された場合で迅速な臨床効果が得られない時には外科的評価を速やかに行うことを推奨する(1C)さらに、患者はメトロニダゾールとバンコマイシンの腹腔内投与と共に、アミノグリコシドまたはセフタジジムの腹腔内投与を最低3週間施行することを推奨する(2C)
  • もし、複数のグラム陽性菌がPD排液から培養された場合には有効な抗菌薬で3週間治療することを推奨する(2C)

 

培養陰性腹膜炎

  • 本委員会は第3病日に排液の細菌培養検査が陰性である場合には、排液中の白血球数と分画をもう1回繰り返し測定することを推奨する(2D)
  • もし、培養陰性腹膜炎が第3病日に改善するのであれば、アミノグリコシド系薬剤による治療を中止し、グラム陽性菌をカバーする抗菌薬(例えば、第一世代セファロスポリン系、もしくはバンコマイシン)を2週間継続することを推奨する(2C)
  • もし、培養陰性腹膜炎が第3病日になっても改善しないのであれば、特殊培養法により非典型的微生物の同定を推奨する(2C)

 

真菌性腹膜炎

  • 本委員会は真菌がPD排液から同定された時にはカテーテル抜去を速やかに行うことを勧告する(1C)
  • 本委員会は適切な抗真菌薬による治療をカテー テル抜去後、最低2週間は継続することを推奨する(2C)

 

結核性腹膜炎

  • 結核性腹膜炎の基本症状は発熱、腹痛と排液混濁であるが、難治性、再発性の腹膜炎であり、培養陰性である場合には結核性腹膜炎を考慮すべきである。
  • 他の細菌性腹膜炎と同様、排液中の白血球は、最初は好中球優位であるが、その後リンパ球が増えてくる。
  • PD排液のチール・ニールセン染色では陰性であることが多く、従来の培養方法では生育が遅く感度も低い。
  • 液状培地 (例: Septi-Check, BACTEC) を使うことで培養陽性までの時間が短縮した。
  • 排液 50 ~100 mLを遠沈し、その沈渣を固形および液性培地に植えることで診断が向上する。
  • PCRを用いたマイコバクテリアDNAの増幅は偽陽性になることも多い。
  • かなり疑わしい場合には、腹腔鏡を用いて腹膜か大網を採取することも迅速な診断に役立つ。
  • 治療は、リファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、オフロキサシンの4剤で開始する。リファンピシンの腹腔内濃度は低いものの、多くの国でリファンピシンの静注用はない。ピラジナミドとオフロキサシンは2ヶ月で投与を中止する。一方、リファンピシンとイソニアジドは12 ~ 18ヶ月継続する。イソニアジドの神経毒性を防止するためピリドキシンを投与するが、高用量は神経炎症をきたすので避ける。ストレプトマイシンは低用量であっても長期投与による耳毒性があり避ける。エタンブトールも透析患者において高い視神経炎のリスクがあるため、投与量を調整する。
  • カテーテル抜去せずに抗結核薬治療に反応した患者が多い。しかし粟粒性結核の患者と腹膜以外に感染巣をもっていない患者とは分けて考えることが重要である。
  • 培養陰性の難治性腹膜炎や再燃性腹膜炎を示す全ての患者についてもこの診断を考慮すべきである。
  • 細菌性腹膜炎に類似して、ほとんどの結核性腹膜炎症例で初期所見としてPD排液に多核白血球が見られる。しかし、通常、透析排液中のリンパ球増多が後に明らかになる。
  • 診断全般に言えることであるが、大量の排液(50~100 mL)を遠心分離して得ることのできる沈殿物を固形培地と液状培地により培養することで陽性率を改善できた。
  • 疑いが高い場合は腹腔鏡下の腹膜生検や大網生検も迅速診断のために推奨されている。
  • 結核性腹膜炎の治療のプロトコールは一般的な結核治療に準ずるべきである。以下の4剤治療、リファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、オフロキサシンによって開始する。先の報告ではPD排液中のリファンピシン濃度がしばしば低いことが示された。このため腹腔内リファンピシン投与が推奨されている。
  • 一般的にはピラジナミドやオフロキサシンは2ヶ月後に中止することが出来、一方リファンピシンとイソニアジドは12~18ヶ月の間は投与を継続すべきである。
  • 多くの患者がカテーテル抜去を行わずに抗結核治療に良好に反応する。しかし、粟粒結核の部分症としての腹膜炎を合併する粟粒結核患者と、腹膜外感染巣を持たない結核性腹膜炎とを鑑別することは重要である。

 

非結核性マイコバクテリアによる腹膜炎

  • 非結核性マイコバクテリアによる腹膜炎のデータは限られているがこれから増えていくであろう。
  • グラム陽性の類ジフテリア菌として誤認される非結核性マイコバクテリアもめずらしくない。
  • 同定された半数以上は、増殖の速い菌種であり、しばしば、3~5日間のルーチンに行われる細菌培養で陽性になる。
  • ESIへの局所ゲンタマイシン軟膏使用が広く行われていることは患者の出口部に非結核性マイコバクテリアによる感染を罹患し易くしているかもしれない。
  • 非結核性マイコバクテリア腹膜炎に対する治療レジメは十分に確立されてないので、感受性試験の結果をもとに個々のプロトコールが必要となる。
  • カテーテル抜去が通常必要であり、非抜去で行われた治療報告は限られている。
  • 抗菌薬の種類やその治療期間は様々であり、至適治療レジメは十分に決められておらず、菌種や薬剤感受性で決められる。

 

カテーテル抜去と再挿入

  • 本委員会は難治性、再燃性、または真菌性腹膜炎の場合に、もし臨床的に禁忌でなければPDカテーテルの抜去を勧告する(1C)
  • 本委員会は難治性、再燃性、または真菌性腹膜炎のためにカテーテル抜去を行った多くの患者においてPDに戻す可能性を考慮することは妥当であるとする(2C)
  • 本委員会は難治性、再燃性、または真菌性腹膜炎によりPDカテーテル抜去が行われた後に新しいPDカテーテルの再挿入を考えるのであれば、カテーテルを抜去し、腹膜炎に伴う症状が完全に回復してから少なくとも2週間の間隔をあけて行うことを推奨する(2D)

カテーテル抜去の適応

  • 難治性腹膜炎
  • 再燃性腹膜炎
  • 難治性ESIと皮下トンネル感染
  • 真菌性腹膜炎
  • 以下の病態についてはカテーテル抜去を考慮
    • 反復性腹膜炎
    • マイコバクテリアによる腹膜炎
    • 複数の腸内細菌による腹膜炎

原著論文:Philip Kam-Tao Li, et al.Perit Dial Int. 2016; 36(5): 481-508.

 

腹膜炎治療時の透析療法

  • 腹膜炎を起こしている状態では、腹膜透過性が亢進しており、除水不全から容易に溢水状態に陥りやすいことに注意しましょう。
  • この際に、限外濾過量を増やそうとして、高濃度のブドウ糖液を使用すると、余計にブドウ糖が吸収されてしまい、かえって溢水状態が悪化する場合があります。イコデキストリン腹膜透析液を使用してもPDでの体液管理が困難と判断された際には、一時的にHDへ移行することを考慮しましょう。
  • 治療目的に頻回な腹腔洗浄を継続することによって、かえって治りが悪くなるという可能性が示唆されているため行わないようにしましょう。ただし、1日1回程度の洗浄は、腹膜の癒着を防止する可能性があるため控える必要はありません。

 

経腸管感染や腹腔内病変が疑われた場合

  • 難治性腹膜炎となる可能性を想定して、外科的治療の適応も考慮しながら治療にあたりましょう。大腸憩室炎等が想定される際には、経口摂取を中止し、腸管安静を図りましょう。

 

排液混濁が強い場合

  • 排液混濁が強い時は、フィブリンによるカテーテル閉塞を予防するために、ヘパリン500単位/L(2Lの注液なら1バッグにつきヘパリン1,000単位)のバッグ内投与を行いましょう。

丹野有道、2011、「腹膜透析療法マニュアル」、東京医学社、P197

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