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領域別情報

腹膜透析(PD)

PDに伴う合併症(感染症)

2 - 3.PD腹膜炎の実際の治療 1)

ISPD腹膜炎ガイドライン2016より抜粋

 

1)腹膜透析患者の腹膜炎の初期症状と対応

臨床診断と初期対応

腹膜炎の初期管理

図1

 

腹膜炎の臨床兆候と診断

  • 腹膜炎は常に以下の臨床所見のうち少なくとも2つを満たすことで診断することを推奨する:
    (1)腹膜炎の臨床徴候である腹痛および透析排液混濁、またはいずれか一方
    (2)透析排液中の白血球数が100/μL以上または0.1 x 109/L以上(最低2時間の貯留後)であり、多核白血球が50%以上
    (3)透析排液培養陽性(1C)。
  • 排液混濁を呈したPD患者は腹膜炎であると考え、診断が確定するまで、もしくは除外されるまで腹膜炎治療を継続することを推奨する(1C)。
  • 腹膜炎が疑われる場合にはPD排液の細胞数、分画、グラム染色、培養を行うことを推奨する(1C)

 

排液混濁の鑑別診断

  • 培養陽性の感染性腹膜炎
  • 無菌性腹膜炎
  • 化学物質による腹膜炎
  • Ca拮抗薬
  • 好酸球性腹膜炎
  • 血性排液
  • 悪性新生物 (稀)
  • 乳糜排液 (稀)
  • 腹腔を一定期間「空」にした後に残存する透析液を排液したとき

※ 12~ 24時間程度の空の状態で排液を先に行った場合にも認められる(訳者注)

 

起因菌の同定

  • PD排液の細菌培養には血液培養ボトルを使うことを推奨する(1C)
  • 培養陰性率が15%以上の場合、検体採取方法と培養方法を見直し、改善することを推奨する(2C)

 

抗菌薬の経験的な選択

  • 微生物学的検査の検体を適切に採取したらできる限り早く抗菌薬の経験的治療を始めることを推奨する(1C)
  • 抗菌薬の経験的な選択はそれぞれの施設に合わせて、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方をカバーする処方を推奨する(1C)
  • グラム陽性菌はバンコマイシンもしくは第一世代セファロスポリンで、グラム陰性菌は第三世代セファロスポリンもしくはアミノグリコシドでカバーすることを推奨する(1B)

 

抗菌薬の投与量

  • 敗血症の所見がない場合、抗菌薬の投与経路として腹腔内投与が推奨される(1B)
  • 腹腔内アミノグリコシドは間歇投与とすることを提案する(2B)
  • 腹腔内アミノグリコシドの長期投与は避けることを推奨する(1C)
  • バンコマイシンの腹腔内投与は間歇投与とし、血清バンコマイシン濃度は15μg/mL以上に保つことを提案する(2C)
  • セファロスポリンの腹腔内投与は連続投与(各々のバッグ内)か、間歇投与とすることを提案する(2C)

腹膜炎治療で推奨される腹腔内への抗菌薬の投与量

  間欠投与 (1日1回) 連続投与 (すべての交換毎)
アミノグリコシド    
アミカシン 2 mg/kg 連日 LD 25 mg/L, MD 12 mg/L
ゲンタマイシン 0.6 mg/kg 連日 LD 8 mg/L, MD 4 mg/L
ネチルマイシン 0.6 mg/kg 連日 MD 10 mg/L
トブラマイシン 0.6 mg/kg 連日 LD 3 mg/kg, MD 0.3 mg/kg
セファロスポリン    
セファゾリン 15 – 20 mg/kg 連日 LD 500 mg/L, MD 125 mg/L
セフェピム 1,000 mg 連日 LD 250–500 mg/L, MD 100–125 mg/L
セフォペラゾン データなし LD 500 mg/L, MD 62.5 – 125 mg/L
セフォタキシム 500 – 1,000 mg 連日 データなし
セフタジジム 1,000 – 1,500 mg 連日 LD 500 mg/L, MD 125 mg/L
セフトリアキソン 1,000 mg 連日 データなし
ペニシリン    
ペニシリンG データなし LD 50,000単位/L, MD 25,000 単位/L
アモキシシリン データなし MD 150 mg/L
アンピシリン データなし MD 125 mg/L
アンピシリン / スルバクタム 12時間毎に2 g/1g LD 750 – 1,000 mg/L, MD 100 mg/L
ピペラシリン / タゾバクタム データなし LD 4 g/0.5 g, MD 1 g/0.125 g
その他    
アズトレオナム 2g 連日 LD 1,000 mg/L, MD 250 mg/L
シプロフロキサシン データなし MD 50 mg/L
クリンダマイシン データなし MD 600 mg/袋
ダプトマイシン データなし LD 100 mg/L, MD 20 mg/L
イミペネム / シラスタチン 交換の1回おきに500 mg LD 250 mg/L, MD 50 mg/L
オフロキサシン データなし LD 200 mg, MD 25 mg/L
ポリミキシンB データなし MD 300,000 単位 (30 mg)/袋
キヌプリスチン/ダルホプリスチン 交換の1回おきに25mg/L a データなし
メロペネム 1g 連日 データなし
テイコプラニン 5日毎に 15mg/kg LD 400 mg/袋, MD 20 mg/袋
バンコマイシン 5 – 7日毎に15 – 30 mg/kg b LD 30 mg/kg, MD 1.5 mg/kg/袋
抗真菌薬    
フルコナゾール 24 – 48時間毎に200 mgを腹腔内投与 データなし
ボリコナゾール 連日 2.5 mg/kgを腹腔内投与 データなし

LD: 初回投与量, MD: 維持投与量
a 1日2回の500 mg の静脈内投与を併用
b APD患者の場合は追加投与が必要

 

抗菌薬の投与方法

腹膜炎治療に推奨される抗菌薬の全身投与量

薬剤 投与方法
抗菌薬  
シプロフロキサシン 1日2回 250 mgを経口投与 a
コリスチン 初回投与量 300 mg、その後連日で150 – 200 mgを静脈内投与 b
エルタペネム 連日 500 mgを静脈内投与
レボフロキサシン 連日 250 mgを経口投与
リネゾリド 1日2回 600 mg を経口もしくは静脈内投与
モキシフロキサシン 連日 400 mgを経口投与
リファンピシン 体重 < 50 kgでは 連日で450 mg、体重 ≧ 50 kg では連日で600 mg
トリメトプリム/スルファメトキサゾール 1日2回 160 mg / 800 mg を経口投与
抗真菌薬  
アムホテリシン 試験的に1 mgを静脈内投与.初期投与量として開始6時間で0.1 mg/kg/日を静脈内投与.その後4日間 0.75 – 1.0 mg/kg/日に増量
カスポファンギン 初回投与量 70 mgを静脈内投与、その後 連日で 50 mgを静脈内投与
フルコナゾール 初回投与量 200 mgを経口投与、その後 連日で50 – 100 mgを経口投与
フルシトシン 1 g/日を経口投与
ポサコナゾール 12時間毎に400 mgを静脈内投与
ボリコナゾール 12時間毎に200 mgを経口投与

a GFRが5 mL/min 以上の残腎機能があれば、シプロフロキサシン500mgを1日2回とする
b コリスチン基準活性 (Colistin base activity:CBA) として表記

 

抗菌薬の投与経路と安定性

  • バンコマイシン、アミノグリコシド、セファロスポリンは生物活性の低下を伴うことなく同じ透析液に加えることができる。
  • アミノグリコシドとセファロスポリンも同じバッグに加えることができる。しかし、アミノグリコシドはペニシリンの入っているバッグに化学的配合変化のため同じバッグに加えてはならない。
  • どの様な抗菌薬でも混合する際はそれぞれの抗菌薬ごとに別々の注射器を使わなければならない。
  • 抗菌薬はPD液に加えられた後、安定している期間は様々である。
    • バンコマイシンは室温の状態で保存されている透析液であれば28日間は安定
    • ゲンタマイシンは室温や冷蔵で14日間安定。しかし、ヘパリンを混合すると安定期間が短縮する
    • セファゾリンは室温で8 日間、冷蔵では14日間安定している。ヘパリンを追加しても影響がない
    • セフタジジムは室温で4日間、冷蔵では7 日間安定している
    • セフェピムは溶液を冷蔵すれば14日間安定している
  • イコデキストリンを主成分とするPD液にはバンコマイシン、セファゾリン、セフタジジム、ゲンタマイシンが添加できる。これらの抗菌薬を混合したイコデキストリン溶液中では、少なくとも37℃で安定であり、4℃で最も安定する。

 

APD療法への考慮

  • 一般的に、上記の間歇的腹腔内投与量はAPD患者の昼間の腹腔内透析液貯留時に投与できる用量である。しかしながら、この投与量データをCAPDからAPDに当てはめると、APD患者では確実に投与量不足に陥る。
  • 代替え案として腹膜炎になった際、APDからCAPDに一時的に変更することもある。
  • セファロスポリンを日中交換時にのみ投与しているAPD患者では、夜間の腹腔内レベルはほとんどの菌に対するMIC:Minimum Inhibitory Concentration (最小発育阻止濃度)より低くなっている。第一世代セファロスポリンをそれぞれの交換サイクル時に注入するのが最利も安全な方法と思われる。
  • バンコマイシンはAPD患者で間歇投与が可能であると考えられる。
  • 経口のシプロフロキサシンはAPDを行っている患者の腹膜内における適切な濃度に達することが可能である。

 

補助的治療

  • 混濁する排液が認められる患者にヘパリンを500単位/ Lで腹腔内注入することは、フィブリンによるカテーテル閉塞を予防するために有効。
  • 症状の程度にもよるが、疼痛コントロールに鎮痛薬が必要になることもある。
  • 来院して初回の腹腔内抗菌薬投与前に1、2度のバッグ交換が疼痛を和らげるためにしばしば行われるが、これを裏付けるデータはない。
  • 腹腔内ウロキナーゼ投与は難治性や再燃性腹膜炎の原因となるバイオフィルムの処置に対して推奨されてきた。しかしながら、RCTでは難治性腹膜炎症例に対して腹腔内ウロキナーゼ投与の利点が見られなかったことが示された。一方で、1件のRCTにおいてカテーテル抜去と再挿入同時施行が腹腔内ウロキナーゼ投与より腹膜炎の再燃を減らす点で優れていたことが示された。
  • 水、ブドウ糖、蛋白質の腹膜透過性は腹膜炎の際には一般的に亢進する。限外ろ過低下が通常みられしばしば体液過剰に陥る。一時的に高張液の使用や短時間頻回のバッグ交換が、適切な除水を保つために必要になるかもしれない。一時的にイコデキストリン透析液を使用することによって腹膜炎時の体液過剰を防ぐ。
  • 急速なブドウ糖吸収によって糖尿病患者において血糖コントロールが悪化する可能性も考えられる。血糖モニタリングと適切なインスリン用量調節が必要になる。
  • 腹膜炎時、透析液への蛋白の漏出も増加する。腹膜の炎症が遷延する場合には低栄養のスクリーニング検査も施行すべきである。

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