1993年にMoncriefとPopovichらによって考案されたカテーテル留置術が、わが国でも実施され、段階的導入法:Stepwise initiation of PD using Moncrief And Popovich technique、「SMAP」と名づけられています。
SMAPとは、カテーテルを留置する際に出口を作製せず、一旦、皮下に埋没し、透析を開始する時期に出口を作製しPDを開始する導入法です。SMAPを施行することで、幾つかの利点が患者および医療者側にもたらされます。導入時の合併症を軽減し、計画的導入が可能であることから、PDの普及に貢献しています。
(窪田実先生 PDカテーテル留置術 バクスター社 JP76200004)
1)利点と欠点
利点
1.腹膜透析の計画的な導入が可能となる
2.カテーテルを埋没するのでカテーテル管理の必要がない
3.カテーテルの種類を選ばない
4.カテーテルの留置・埋没は容易・安全である
5.長期間のカテーテル埋没も可能である
6.集中的な十分な患者教育が計画可能である
7.適正な時期に腹膜透析が開始できる
8.腹膜透析が迅速に開始できる
9.十分な量の透析量が短時間に得られる
10.透析液のリークの危険性がない
11.カテーテル感染症が少ない
12.入院期間が短い
欠点
1.カテーテル埋没後の腹腔内情報が得られない
2.2回の手術が必要
3.埋没後および出口形成術後の創管理が在宅で必要
4.留置術後の際に身体障害者1級が通りにくい可能性がある
(参考:JSDT PDガイドライン2019)
2)カテーテル埋没(1)
カテーテルを反転創から取り出した後に、閉塞予防、容易な出口作製、埋没中の皮下への腹水の漏出の予防を目的に将来出口になる部分に結束バンド(タイバンド)を装着します。ヘパリン注入後にタイバンドを締めてカテーテルを閉塞させます。(タイバンドは医療用として認可されていませんので、その使用は各施設の倫理委員会などの判断に委ねられます。)
カテーテルの閉塞には、先端にシリコン栓を詰める方法、先端を糸で縛る方法などもあります。
タイバンドの柄を切除した後にカテーテルをトロッカーにつなぎ、皮下トンネルを作製します。
将来出口になるタイバンドの部分は皮下を浅く通過するように注意しましょう。
カテーテルの全長が埋没できるようにカテーテルの長さよりも遠くの位置でトロッカーを皮下から穿通します。
(窪田実先生 PDカテーテル留置術 バクスター社 JP76200004)
3)カテーテル埋没(2)
カテーテルを指で直接つかんで引っ張ると、タイバンドが皮下を通過します。
つかんでいるカテーテルを離すと、伸張したカテーテルは縮んで自然に皮下に埋没されます。
(窪田実先生 PDカテーテル留置術 バクスター社 JP76200004)
4)カテーテル埋没(3)
SMAPによるカテーテル留置・埋没後の腹部レントゲンを示します。
(窪田実先生 PDカテーテル留置術 バクスター社 JP76200004)
5)カテーテル出口作製
タイバンドの位置を確認し、1.5mLの局所麻酔を1箇所のみに施し浸潤させます。
尖刃で7mmの切開をおきます。横切開より縦切開の方がカテーテルを容易に取り出せます。
繊維状組織に包まれたタイバンドが完全に見えるまで剥離します。タイバンドを鉗子で確実に把持し、タイバンドとカテーテルを取り出します。切開創の辺縁は出口壁であるため挫滅しないように丁寧に扱いましょう。タイバンドを切除し、カテーテル機能を評価します。チタニウムアダプター、接続チューブを接続し、1.5L~2Lの透析液を注入してCAPDを開始します。
(窪田実先生 PDカテーテル留置術 バクスター社 JP76200004)
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