4)切開(1)右経腹直筋切開の例
術前にベッドサイドで座位および仰臥位で腹壁を十分に観察します。出口はシワの底、ベルトラインを避け、日常のカテーテルケアがやり易い位置を選択します。留置デザインが決定されたら皮膚にマーキングを行います。
出口は体壁の襞やベルトラインを避け、カテーテルケアがやりやすい部位を選択します。
臍と恥骨上縁の中間のやや上を切開創の中心として、5cmの右経腹直筋縦切開をおきます。
5)切開(2)
皮下組織を電気メスおよび鈎を用いて剥離していくと腹直筋鞘前葉に達します。
腹直筋鞘前葉を縦切開します。腹直筋を鈍的に左右に分け、腹直筋鞘後葉を露出します。
後葉上に存在する下腹壁動静脈を損傷しないように注意しましょう。
6)カテーテル挿入(1)
露出した腹直筋鞘後葉の中央2ヶ所をモスキート鉗子で持ち上げて尖刃で5mmの切開をおくと、腹膜が現れます。
腹膜をモスキート鉗子で持ち上げ、5mmの切開をおくと腹腔に通じます。
後葉切開後に腹膜前脂肪層が存在する場合は、これを注意深く鈍的に剥離して腹膜を確認しましょう。
腹膜小孔の周囲に巾着縫合をおきます。
7)カテーテル挿入(2)
スタイレットを装着したカテーテルを軽く湾曲させ、先端を前腹壁に沿うように腹腔内に挿入します。カテーテルの腹膜カフ下1/2の長さが挿入された時点でカテーテルを反転させ、直腸膀胱窩もしくはダグラス窩にカテーテル先端を位置させ、スタイレットを抜去します。
尾側の腹壁を挙上し、スタイレットを用いない方法(ノンスタイレット法)でも、カテーテルを適正な位置に挿入できます。
良好な位置に挿入されると次の事項が確認できます。
1.スタイレットが抵抗なく''ストン''と収まる。
2.ヘパリン加生理食塩液がスムーズに注入できる。
3.自然落差で液が水流様に注入量の80%以上が排出される。
ただし、大網を吸引してしまう可能性があるため、シリンジで排液を回収してはいけません。
8)カフの固定(1)
カフと腹膜の3箇所に糸をかけます。その際、腹腔内臓器とカテーテルの誤穿刺に注意しましょう。
腸管穿孔を防ぐためには粘膜剥離子を腹腔内に進入させ腸管を保護し、針を腹膜にかけるようにします。
カフと腹膜にかけた3箇所の糸を結紮します。
9)カフの固定(2)
カテーテルを頭側に少し挙上させ、巾着縫合糸を結紮します。
Point
★糸かけの際のカテ-テル損傷を予防するために、カフを小さめの鑷子でしっかり把持するとカフが固定され、針が正確に刺入できます。
★カテ-テルと腹膜の固定を確実にするために、2回の巾着縫合をおくか、巾着縫合の下側に糸を一周させ結紮することもあります。
★術中にカテーテルを垂直に立てると、腹腔内で位置異常が生じます。術中はカテーテルを寝かせて操作しましょう。
10)皮下トンネル作製(1)
カテ-テルが捻れていないことを確認してトロッカーに接続し、逆U字型の皮下トンネルを作製します。皮下トンネルの作製には、皮下トンネルのデザインに合った角度を有するトロッカーを用いましょう。
長い皮下トンネルの作製には腹腔鏡の把持鉗子を使うと容易です。
下向きのカテーテル出口を作製します。皮下カフの逸脱を防ぐために、皮下カフと出口の距離は4cm以上とりましょう。カテーテルにチタニウムアダプター・接続チューブを接続します。
透析液を注入して、リークのないこと、注排液の良好なことを権認しましょう。
11)皮下トンネル作製(2)
出血がないことを確認して閉創します。
まず、腹直筋鞘前葉に、頭側からインターロッキング縫合(連続かがり縫合)を施します。
次に皮下・皮膚縫合を行います。
カテーテル出口から2cmの部位をテープで固定、ガーゼで被覆して終了します。
(窪田実先生 PDカテーテル留置術 バクスター社 JP76200004)
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