1.PDカテーテルの構造
1)カテーテル先端部の形状と特徴
ストレート型:
先端部が直線的でダグラス窩(直腸子宮窩または直腸膀胱窩)への留置が容易です(図のタイプ)。
カール型:
先端が外から中へ渦巻き状の形状になっているタイプで、透析液の注排液時の疼痛が少なくカテーテル位置移動や大網、腸管の巻き込みが少ないといわれていますが、明確なデータはなく、いったん位置移動を起こすと整復しにくいという欠点があります。
2)カフ間の形状と特徴
ストレート型:
カフ間は直線的で、皮下部分をカテーテルの自然湾曲によって埋め込むために、カテーテルの復元力によって位置移動が生じやすいといわれています(図のタイプ)。
スワンネック型:
カフ間がU字型になるように成形されているタイプで、出口部を下向きにすることで、汗や垢、水滴などが出口部に溜まることを防ぎ、出口部を清潔で乾燥した状態に維持できるといわれています。
2.我が国での汎用度の高いカテーテル
カテーテルは腹腔内部分、2つのカフ間、皮膚から外に出る部分に分かれます。外径は5mm、内径は3mm、長さは製品により異なります。
腹腔内部分には4列10個、およそ40個の側孔と呼ばれる小孔が開けられており、側孔内径は0.5~0.8mmで製品により異なります。
図に示すカテーテルはカフ間が湾曲した「スワンネックタイプ」と呼ばれるもので、腹腔から上行したカテーテルを皮下で自然に下向きにすることができ、カテーテルの復元力を減じて腹腔内の跳ね上がりを防止しつつ出口を下向きに作製できる特徴を持つ汎用タイプのカテーテルです。
一般的にPDカテーテルは全長に放射線(X線)不透過ラインが埋め込まれており、透視下でカテーテルの位置を確認することができます。
(窪田実先生とバクスター株式会社による作図)
3.カテーテル挿入術前後の処置
1)挿入前の処置
- ベルトライン、腹部手術痕や腹壁と腸管の癒着、腹部の皺などを確認し、患者の希望も考慮し切開創・出口の位置を決定およびマーキング
- 絶飲食の維持
- 腹部の皮膚を傷つけないよう剃毛・脱毛
- 消毒液を使用した入浴
- 洗腸、完全排尿と導尿など消化管、膀胱の前処置
- 抗菌薬の予防投与
2)挿入後の処置
- 腹部X線写真:正面像と側面像によるカテーテル位置や腸管ガス像の確認
- カテーテル機能の評価
- 疼痛管理
- コンディショニングの開始
4.手術早期の合併症
- スタイレット使用による膀胱、腸管などの臓器穿孔や腹膜前脂肪層への誤挿入
- 透析液のリーク(腹膜の結紮不良や術中カテーテル損傷、トロッカーによる腹膜穿通など)
- 腹腔内出血(血性腹水)
- 腹痛や術後の創痛、注排液時の疼痛
- フィブリン塊や凝血塊によるカテーテル閉塞
- 位置移動や大網、卵管采などの臓器巻絡による閉塞
- 皮下トンネル部分のカテーテル曲り
- 便秘による閉塞
(参考:JSDT PDガイドライン2019)
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