肥満患者に対するPD導入のポイント
ERBP (European Renal Best Practice)より、腹膜透析(PD)適応に関する臨床アドバイス の中に、肥満は腹膜透析(PD)の禁忌と考えられるべきではないとあります。
ここでは肥満患者に対する腹膜透析(PD)導入に際し、そのポイントについて図を用いてご紹介します。
ERBP (European Renal Best Practice)より腹膜透析(PD)適応に関する臨床アドバイス
以下の臨床状態は腹膜透析(PD)の禁忌と考えるべきではない:
- 腹膜透析(PD)を実施するにあたり,身体的・精神的に困難と考えられる患者
- 高齢
- 治療に対してアドヒアランス / コンプライアンスが低い患者
- 肥満
- 鬱血性心不全
- 多発性嚢胞腎
- 憩室炎
- 腹部ヘルニア
- 門脈圧亢進
- 肝移植
Covic A, et al. Nephrol Dial Transplant. 2010; 25(6): 1757-1759.
出口部作成の位置
肥満患者への腹膜透析(PD)導入に際して考慮する点として、出口部をどの位置に作成するかという点があります。
ここでは2つの方法をご紹介します。
<上腹部カテーテル:UAE(upper abdominal exit-site)>
バクスター社. CAPD Manual カテーテル留置術, 2007.
<上腹部カテーテル:UAE(upper abdominal exit-site)>
<前胸部カテーテル(別名:バスタブカテーテル)>
出口部分を上方に作成する方法
バクスター社. CAPD Manual カテーテル留置術, 2007.
<前胸部カテーテル(別名:バスタブカテーテル)>
UAEの選択理由としては、従来の腹部出口では 皮下脂肪により出口部のケア・観察が困難であること、皮膚のたるみから、出口感染の危険が高いことなどが挙げられます。
高度肥満患者への上腹部出口 (UAE) 例
江崎隆, 他. 中国腎不全研究会誌. 2010; 19: 227-228.
肥満患者での適正透析への考慮
肥満患者へは 透析不足にならないよう適正透析を維持するため 透析液量を考慮する必要があります
BMIで階層化した血液透析(HD)患者に対する腹膜透析(PD)患者の死亡の相対リスクに関しては30.00以上でハザード比が1を超えるので、透析不足にならないように適正透析量を維持する必要があります。
Lievense H, et al. Nephrol Dial Transplant. 2012; 27: 3631–3638.