1)PETの特徴
- 腹膜の透過能をみる再現性に優れた検査法です。
- PETは非侵襲的であり、客観性、簡便性、経済性に優れています。
- PETは導入初期および半年~1年ごとに施行し、PD処方あるいは透析方法の変更を検討する材料とします。
- 腹膜炎後の除水不全が持続する場合にも施行を考慮します。
- EPSはPD離脱後に発症する頻度が高いため、PETカテゴリーHighが持続する場合はPD離脱後も一定期間カテーテルを留置し、PETで腹膜機能を観察する場合もあります。
- カテーテル挿入1カ月以内、腹膜炎後1カ月以内では腹膜機能が安定していないため、PETはそれぞれ1か月以上経過の後に施行することが勧められています。
- PET前夜の長時間貯留でイコデキストリン透析液を使用するとPETデータに影響することがありますの、ブドウ糖透析液に切り替えて長時間貯留することが勧められています。
2)PET操作手順(操作マニュアル)
PET(Peritoneal Equilibration Test)操作手順マニュアル JP76200005
3)PETカテゴリー

PET(Peritoneal Equilibration Test)操作手順マニュアル JP76200005
D/P Crは小分子量物質の除去効率、D/DO Gluは除水効率を評価する指標となります。
High Transporter (PETカテゴリー H、HA)
時間当たりの溶質透過性が高い一方で、浸透圧物質であるブドウ糖の吸収も早いため除水能が早期で低下してしまいます。したがいまして、APDサイクラーなどを使用してブドウ糖透析液の短時間頻回貯留が推奨される性質のカテゴリーということになります。
Low Transporter (PETカテゴリー L、LA)
時間当たりの溶質透過性が低い一方で、浸透圧物質であるブドウ糖の吸収も遅く除水能が長時間維持されますので、ブドウ糖透析液の長時間貯留が推奨される性質のカテゴリーです。また、溶質の除去能が低いことから、中分子量以上の尿毒症物質除去を念頭に一回当たりの注液量を増加したり、空の時間を設けず交換回数を増やしたりして透析液量を増加させる必要が出てくる場合があります(High Dose PD)。
4)日本人でのPETカテゴリー分類
患者比率 (%)* |
PETカテゴリー | 4時間 D/P | 腹膜透過性の特徴 |
---|---|---|---|
13.0% | High(H) | 0.82-1.03 |
|
38.4% | High Average(HA) | 0.65-0.81 |
|
38.3% | Low Average(LA) | 0.50-0.64 |
|
10.3% | Low(L) | 0.34-0.49 |
|
* I Masakane et al, Perit Dial Int. 2008 Jun;28 Suppl 3: S27-31
表は日本人のPD症例におけるPETカテゴリー別の患者比率*と腹膜透過性の特徴を示しています。
PETで腹膜機能の特徴(透過性)を知ることが、適正な透析処方(透析液濃度、透析液量、貯留時間、交換頻度)を行うための一助となります。
5)PET結果に基づく療法選択の基本方針
カテゴリー | CAPD(8L/日)での予測 | NPD | DAPD | Std CCPD |
Std CAPD |
High Dose PD |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|
限外濾過量 | 溶質除去量 | ||||||
H | 不良 | 良好 | * | * | |||
HA | 比較的良好 | 良好 | * | * | |||
LA | 良好 | 比較的良好 | * | * | |||
良好 | 不良 | * | |||||
L | 非常に良好 | 不良 | * |
DAPD | : | Daytime Ambulatory Peritoneal Dialysis |
Std CCPD | : | 夜間6-8Lと昼間2Lを使用 |
Std CAPD | : | 1日8Lの透析液を使用 |
High Dose PD | : | 1日9L以上の透析液使用によるCAPD、 夜間8L以上、昼間2-4Lの透析液使用によるCCPD |
表は腎機能喪失時の場合で、「*」はより適していることを意味します。
Tawardowski Z.J.,et al.Clinical Value of Standard Equilibration Test in CARD Patients,Blood Purification. 1989, 7:95-108
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