最もよく吟味された臨床的モデルとしてRippeらが提唱した「Three pore model」では、腹膜の毛細血管内皮細胞は溶質と水の移動を可能にする3つの“孔”を有するとされます。
これらの3つの孔は膜貫通アクアポリン1(水チャネル)、small poreとlarge poreであり、以下に記すような特徴を有しています。
孔 | 特徴 | 密度 |
---|---|---|
Ultra-small pore アクアポリン1(AQP1) |
浸透圧活性に曝されると細胞膜上へトランスロケートし開口し水だけを通す孔(水チャネル)であり、水移送の4割を占め、溶質通過の完全なバリアとなる。 | 高い |
Small pore | 尿素、ナトリウム、カリウムやクレアチニンなどの小分子が水に溶解した形で輸送を可能とする内皮細胞間隙で、水移送の6割を占める。 | 高い |
Large pore | タンパク質のような大分子の輸送を可能とする大きな内皮細胞間隙で、数が少ないため水移送にはほとんど関与しない。 | 低い |
自動腹膜灌流装置(APDサイクラー)による短いサイクルでの透析液の注排液では、浸透圧活性によりAQP1経由で速やかな水の移動が起こり、相当量のナトリウムの“篩”効果が注液開始後30~60分程度増強されます。そのためAPDサイクラーのみで処方されている患者においては相対的な高ナトリウム血症となり、口渇による水分摂取の増加を招き期待される除水効果は減弱することがあるので、ナトリウムの出納に留意が必要です。
一方、CAPDのように一定時間以上の透析液貯留を行う場合は、ナトリウム篩の後に毛細血管と透析液のナトリウム濃度格差が広がるため、透析液中へのナトリウムの拡散が増加し、相対的な高ナトリウム血症は解消されることになります。
AQP1はブドウ糖透析液の高い浸透圧活性によって活性化されますが、浸透圧格差の少ないイコデキストリン透析液ではAQP1が活性化されないためナトリウム篩効果はみられません。