バクスターPDナースカレッジテキスト 2020年改訂版 JP-200091(1)から引用
3)好酸球性腹膜炎
原因
- 術中に腹腔内混入した空気や使用器材とその滅菌方法、薬液等へのアレルギー
症状・兆候
- 排液混濁を認めるが、腹痛や発熱などの症状は認めない
診断
- 排液中の白血球の増加が見られるが、細菌培養は陰性
- 感染性の腹膜炎と違い排液細胞数は好酸球が増加(好酸球性腹膜炎ともいわれる)
- 一般的にPD導入後の2~3週間以内に生じ、通常、翌週には自然に軽快
治療
- 細菌性腹膜炎を疑い、好酸球性腹膜炎での排液混濁と鑑別診断がつくまでは腹膜炎治療を継続
- 好酸球性腹膜炎と鑑別できたら自然消失を待つか、必要に応じ抗アレルギー剤・ステロイド剤を投与
4)乳糜排液
原因
- カルシウム拮抗薬の内服、脂肪過多の食事、急性膵炎や肝硬変、リンパ管損傷による排液中の資質増加による白濁
- マニジピン、ペニジピン、ニソルジピン、ニフェジピン、アゼルニジピン、エホニジピンなどカルシウム拮抗薬の添付文書には「PD腹膜炎との鑑別に留意」という記載あり
症状・診断
- 排液混濁以外の症状は無し
- 排液中にリンパ球が多く存在
- 排液分析(排液へのエーテルおよびアルコールの混合有機溶媒の添加により、脂肪による混濁では白濁消失、透明化)
治療
- 薬剤変更
- 食事性の排液混濁は一過性のことが多く、特に治療は行わない
- 原因疾患治療
- リンパ腫、非リンパ腫の腹部悪性腫瘍、腹部大動脈瘤術後、リンパ行性転移、胆嚢摘出術後、炎症性腹膜炎(マイコバクテリア、フィラリアなど)、膵炎、SLEにおける腺炎、肝硬変、アミロイドーシス、上大静脈症候群、カルシウム・ヒドロキシホスフェイト・アパタイトの結晶など
5)血性排液
原因
- カテーテル挿入術による出血
- カテーテルの刺激による腹腔内臓器の損傷
- 女性では月経や排卵時など性周期に伴って出現
- 腹腔内病変など(出血傾向、EPS、癌)
症状・診断
- 透析液1Lに血液2mL以上が混ざって血性の排液として観察される
- カテーテル閉塞に注意し経過観察
- 出血が持続する場合、原因不明の場合は積極的に原因検索
治療
- 軽度の場合は様子観察
- 出血が持続する場合は原因への対処
- EPS、逆行性月経、悪性腫瘍(卵巣、大腸)、腹膜への転移、卵巣嚢腫の破裂、子宮内膜症、子宮外妊娠、膵炎、脾臓の裂傷あるいは破裂、後天性凝固障害、肝臓や腎臓の嚢胞破裂、下部消化管内視鏡検査後、放射線治療後、腹部外傷、動脈瘤
6)腰痛
原因
- 腹腔内に透析液を貯留するため、生理的な脊柱の彎曲が強くなり腰痛の原因となる
- 慢性腎不全に見られる筋力低下や骨病変も症状発症に関与する
症状・診断
- PDが原因の腰痛は、腹腔内が空になると苦痛が軽減する
治療
- 急性期: 安静、鎮痛剤
- 慢性期: APD療法によって就寝(臥床)中に透析を行い、活動時の腰部への負荷を減少させる
- 腰痛体操で筋力アップを行ったり、弾性コルセットを使用したりして治療
- コルセットの長期使用による筋力低下に留意
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