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PDに伴う合併症(感染症)

(監修: 東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 丹野有道先生)

腹膜透析(Peritoneal Dialysis:PD)の感染症は予防が第一ですが、罹患した場合は迅速かつ的確な診断と治療を行い、しっかりと完治させることが重要です。ここでは腹膜透析(PD)の感染症の診断および治療法をお示しいたします。

 

1 - 1.出口部・トンネル感染 (1)

1)出口部の構造および出口部感染の発症機序

正常な出口部

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丹野有道、2011、「腹膜透析療法マニュアル」、東京医学社、P174-180

創部安定期では、皮下組織の創面が皮膚および皮下(外部)カフをつなぐ結合織としてカテーテルを覆うことになります。出口部近傍の健常皮膚組織がバリア機能を保持し、かつ、皮下カフと強固に結合することにより、細菌の侵入を防止できることが理想的です。しかし、長期間の経過とともに表皮のダウングロースが発生してカテーテル周辺にポケットを形成し、sinus内への落屑組織の蓄積は感染の温床となりやすいため、移行部が傷ついた時に備えて、清潔に保っておく必要があります。


出口部~皮下トンネル部の組織

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丹野有道、2011、「腹膜透析療法マニュアル」、東京医学社、P174-180

体表部は皮膚組織であり、健常な扁平上皮に覆われてバリアとしての機能を有しています。皮下トンネル部はcollagen線維を主体とする強固な結合組織を形成し、カテーテル周囲から皮下カフヘと連なっており、いずれも細菌の侵入門戸としては容易でないことが推察できます。ところが、sinus入口部直下に位置する皮膚組織から皮下トンネル結合組織への移行部は比較的脆弱なので、このようにsinusがいかに強固な結合織で覆われたとしても、移行部からの細菌侵入を完全に防御することは困難といえます。


出口部損傷予防

1.カテーテルを圧迫したり引っ張られたりすることを極力避ける

  • 出口部ケアやバッグ交換時に引っ張られないようにする
  • 出口から自然に出ている方向に固定する
  • カテーテルのねじれは真っ直ぐにもどす
  • 固定する時はカテーテルを引っ張り過ぎない
  • 痂皮(crust や scab)を無理に取り除かない

2.出口にかかる圧力を最小限にする

  • ベルト・シートベルト・衣服による圧迫が加わらないように注意する
  • 圧迫されにくい位置に出口部を形成する
  • 腹臥位で寝ない
  • 出口のトラブルに備えて、できるだけ早めに教育する

3.石鹸や消毒液等に対するアレルギーや刺激に注意する

4.絆創膏や粘着剤による刺激を避ける

5.出口を掻いたりつついたりしない

丹野有道、2011、「腹膜透析療法マニュアル」、東京医学社、P174-180

不安定なカテーテルの固定などによる機械的損傷や消毒薬などによる化学的損傷により、脆弱な移行部の構造的破綻が生じ、次いで同部から不良肉芽が形成されて細菌の侵入が容易となり、出口部感染へと進展するものと考えられます。移行部は傷つきやすく感染しやすいことを念頭において、出口部感染の引き金となる移行部の構造的破綻を防ぎ、健全な状態の移行部をいかに維持するかがポイントになります。移行部の損傷を防ぐために愛護的に扱い、損傷によりバリア機能が破綻した際に細菌が侵入するリスクを少しでも低減するために、出口部周辺を清潔に保っておくことが大切となります。