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PDに伴う合併症(感染症以外)

3 - 1.その他の合併症 - 1

1)ヘルニア

原因
  • 透析液による腹腔内圧の増加(ヘルニアの既往歴、高齢者、経産婦など)。
症状・診断
  • カテーテル留置部位(とくに正中部)、カテーテル出口部周囲、腰部、術創部、陰部、鼠径部など組織の弱い部分に膨隆がみられる。
  • 局所の疼痛、発赤、発熱、篏頓など。
治療・予防
  • 透析液量を減らし、交換回数を増加する。軽度のものはそのまま様子を観察する。保存的治療で改善しない際には、外科的治療が推奨される。
  • 外科的治療としては、大別して縫合閉鎖法とメッシュ法がある。
  • 周術期管理は施設により異なる。例えば、HDを術2日前より連日で施行し、術後、電解質や水分の問題がなければ、術翌々日にHDを行う。
    術後は、1~4週間程度HDを行った後にPDを再開する。

柳沼樹宏、2011、「腹膜透析療法マニュアル」、東京医学社、P224-228

発症頻度、発症時期
  • PDにおけるヘルニアの合併は10~25%と報告されています。
  • 発生部位は臍ヘルニア、鼠径ヘルニア、手術創からのヘルニアが多いと報告されています。
  • 危険因子としては年齢40歳以上、ヘルニアの手術既往、3回以上の妊娠、3回以上の腹部手術、閉塞性肺疾患の合併などがあげられます。
  • 鼠径ヘルニア発症までの期間は、透析導入直後から55カ月程度との報告があり、平均すると5~ 6カ月程度と考えられています。
原因
  • 発生要因としては、透析液の貯留に伴う腹腔内圧の上昇により腹膜鞘状突起遺残が拡張することや、閉鎖不全によるもの(物理的要因)、腹壁における結合組織の脆弱性などが関係していると考えられています。
  • 腹圧を上昇させるような状況も関与していると考えられています。透析液注入中の腹腔内圧は透析液1Lあたり臥位2.0 cmH20、立位2.7 cmH20、座位2.8 cmH20と上昇していきます。
  • 重い物を持ちあげる、排便時のいきみ、笑うなどの動作もヘルニアの発生に影響していると考えられています。
症状・診断
  • 診察上、鼠径部や臍部、術創部から突出した腸管を触れることで発見されることが多く、CTで腸管が腹腔外へ突出していることで診断します。
  • PD導入前の検査としては、腹腔内造影や腹腔内造影剤注入CT 検査が有用とされています。ヘルニアの存在を証明できれば、PDカテーテル挿入術との同時手術が期待できます。
治療
  • 縫合閉鎖法は異物を用いない点で感染はあまり問題となりませんが、比較的再発率が高いとされています。メッシュ法は腹圧を広く分散させることになり再発率は低いですが、逆に感染が懸念されます。
  • 過去の東京慈恵会医科大学病院のEPS剖検例では、鼠径ヘルニアに対してメッシュ治療を行った部位に腸管の嵌頓を認め、壊死した症例を経験していることから、鼠径ヘルニアの治療後も十分な経過観察が必要と考えております。
  • 周術期管理は術直後からPDを再開する方法、残存腎機能を頼りHDを行わず数日後よりPDを再開する方法、1-3か月のHD後にPDを再開する方法、などがあります。

2)横隔膜交通症(胸水貯留)

原因
  • 横隔膜の欠損、脆弱(先天的/後天的)部位から、腹腔内透析液の移行。
  • 横隔膜リンパ管からの移行。
症状・診断
  • 無症状の場合もあるが、胸痛、胸部圧迫感、咳嗽、呼吸困難・呼吸音の減弱が認められる。また、発症は右肺に多く見られる傾向がある。
  • 胸部X線写真による胸水の確認(透析液貯留時と排液時で異なる)。
  • 胸水穿刺により、胸水中にブドウ糖濃度の上昇を認める。
  • 鑑別診断としては、肺実質性疾患、うっ血性心不全、胸膜炎を否定する。
  • 確定診断として色素や放射性同位元素を透析液に混合したものを腹腔内に投与し、確認する方法がある。
治療
  • 保存的治療
  • 胸膜癒着療法
  • 外科手術(胸腔鏡下で横隔膜の補強)

柳沼樹宏、2011、「腹膜透析療法マニュアル」、東京医学社、P224-228

原因、症状、診断
  • PD患者の1.6%程度に発症すると言われています。
  • 横隔膜に欠損があるケースには、先天的に欠損している場合と、後天的に横隔膜の脆弱な部分が腹腔内圧の上昇に伴い破裂して小孔を形成する場合に分けられます。
  • 腹膜透析液を注入すると、通常の腹腔内圧よりも高くなり、咳嗽や排便時など腹圧がさらに上昇すると、横隔膜交通症を発症する可能性が高くなると考えられています。
  • 右側に多く発症しやすい理由としては、横隔膜のリンパ管が右側によく発達し、欠損部分も多いことがあげられます。
  • 確定診断にはインジゴカルミンなどの色素や放射性同位元素(99mTc-macroaggregated albumin, 99mTc-human serum albumin, 99m Tc-Sn-colloid)を透析液に混合したものを腹腔内に投与し、直視下に色素を確認する方法と、RIを用いて腹腔内から胸腔内への放射性同位元素の移行を確認する方法があります。
治療
  1. 保存的治療

    一定期間、腹膜透析を休止すると、自然に寛解する可能性があります。再開の基準などは特にありませんが、再開する際には低容量(500 mL~ 1000 mL)から再開することが推奨されます。その後、X線で胸水が貯留しないことを確認し、徐々に貯留量を増加させることが望ましいです。経過中に再発するケースもしばしば報告されており、このような症例については、癒着療法や外科的治療が選択されます。
     

  2. 胸膜癒着療法

    胸腔側から自己血やOK-432(ピシバニール)などの投与を行い、 胸膜を癒着させることで、胸腔内への透析液の流入を防ぐ方法です。
     

  3. 外科的治療

    近年、胸腔鏡下に横隔膜を補強する方法が主流となっています。横隔膜の欠損部分が明らかな場合には、テフロンパッチによる欠損孔の閉鎖や吻合器による縫縮術が行われます。欠損部分が明らかでない場合や横隔膜の脆弱性が考えられる場合には、胸腔鏡下にフィブリン糊を塗布するなどの方法が用いられます。以上の治療を行った際には、術後約1週間程度で腹膜透析を再開することが可能なケースが多いと考えられています。