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PDに伴う合併症(感染症)

2 - 1.PD腹膜炎 概要

(1)感染経路

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丹野有道、2011、「腹膜透析療法マニュアル」、東京医学社、P189-200

感染経路は外因性と内因性に大別されます。

【外因性】
経カテーテル感染(バッグ交換時のミスで起こるタッチコンタミネーションと呼ばれるものや、カテーテルやバッグの傷から微生物が侵入して起こるケースがある)と傍カテーテル感染(出口部・皮下トンネル感染からの波及)があります。

【内因性】
経腸管感染(虫垂炎,憩室炎,腸管穿孔など)、経腔感染、および血行感染があります。
わが国の腹膜透析(PD)関連腹膜炎の発症頻度は、諸外国に比べると成績が優れていると言われていますが、これはバッグ交換システムの進歩と患者教育の徹底による経カテーテル感染の減少が大きく貢献したものと思われます。その一方で、虫垂炎や憩室炎などから波及した内因性腹膜炎が相対的に増加しているのが最近の特徴であり、治療を行う上で留意する必要があります。


(2)PD腹膜炎の臨床症状

発熱 58/64例=90.6%
腹痛 47/64例=73.4%
反跳痛・腹膜刺激症状 21/64例=32.8%
悪心・嘔吐 1/64例=1.6%
下痢 4/64例=6.3%
出口部感染の併存 6/69例=8.7%

※傍カテーテル感染と考えられる腹膜炎:0例

丹野有道、2011、「腹膜透析療法マニュアル」、東京医学社、P189-200

東京慈恵会医科大学病院におけるPD腹膜炎の臨床症状です。排液混濁のほか発熱、腹痛、悪心/嘔吐などが症状の上位になりますが、一方で、腹痛、発熱、悪心/嘔吐を認めない症例も少なくないことから、その診断には留意が必要です。


(3)PD腹膜炎の診断

国際腹膜透析学会(ISPD)ガイドラインによるPD腹膜炎の診断

  1. 排液混濁
  2. 4時間以上貯留した排液を検体として用いて、白血球数100個/μL以上、かつ多形核好中球の比率が50%以上
  3. 排液の培養検査・グラム染色で起炎菌の検出

排液混濁の鑑別診断

PD腹膜炎以外でも排液混濁を呈することがあるため、上記の基準に基づいて診断を行う。

・培養陽性の感染性腹膜炎 ・血性排液
・無菌性腹膜炎 ・悪性新生物(まれ)
・化学物質による腹膜炎 ・乳糜排液
・好酸球性腹膜炎 ・腹腔を「空」にした後に採取した排液

丹野有道、2011、「腹膜透析療法マニュアル」、東京医学社、P189-200

診断は国際腹膜透析学会(ISPD)ガイドラインの腹膜炎の診断法に準拠して実施することが推奨されます。また、以下に診断の留意点を示します。

  • 自動腹膜灌流装置(APD)を使用している場合には、貯留時間が短いため、PD腹膜炎を合併しているにもかかわらず排液中白血球数が診断基準を満たさないこともあるので注意が必要となります。
  • 腹膜炎を起こしていない場合には、多核白血球がほとんど認められないので、たとえ排液中白血球の絶対数が100個/μLに達していなくても、多核白血球数の比率が50%を超えている際には、細菌性腹膜炎が強く示唆されます。
  • APDを用いて夜間のみPDをしている患者が、腹腔内が「空」の状態で来院した場合で、PD腹膜炎が疑われるようであれば、1Lの透析液を注入し、(1~ )2時間以上貯留してもらった状態の検体で評価しましょう。
  • 虫垂炎や憩室炎など、経腸管感染が原因であった場合でも、典型的な腹部所見を欠くことは稀ではなく、診断に難渋し治療が遷延することがありますので注意が必要です。
  • 治療の反応が少しでも鈍いようであれば、経腸管感染の可能性を常に念頭において培養検査をするとともに、CTや超音波検査などによる評価を見直した方が良いでしょう。
  • 培養検査を行う際は、抗菌薬投与前の排液検体をカルチャーボトル法にて行うことで、培養陽性率を向上させることができます。ISPDガイドラインでは、50 mLの排液を遠心分離した沈渣を培養に用いることを推奨しています。