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PDガイドライン

2.ガイドライン(全五章)と実践のポイント

第一章 導入

  1. 腹膜透析(PD)導入に際しては、血液透析(PD)、腹膜透析(PD)、さらに腎移植に関する十分な情報の提供を行い、同意のもと決定する。(エビデンスレベルVI:委員会オピニオン)
  2. 腹膜透析(PD)の有用性を生かすために、患者教育を行い、計画的に導入する。(エビデンスレベルIII)
  3. CKDステージ5(糸球体濾過量15.0 mL/min/1.73㎡未満)の患者で、治療に抵抗性の腎不全症候が出現した場合、透析導入を考慮する。(エビデンスレベルVI:委員会オピニオン)
  4. 糸球体濾過量が6.0 mL/min/1.73㎡未満の場合は透析導入を推奨する。(エビデンスレベルVI:委員会オピニオン)

POINT1: 十分なインフォームドコンセント   POINT2: 導入前の患者教育と計画導入
  • 治療の医学的メリットとデメリット、どのようにライフスタイルが変わるか、どのような人生設計をするかなどについて、医師、ナースなどを中心にチームで十分な情報提供を行いましょう。
 
  • 腎機能が維持される時期に計画的に腹膜透析(PD)を導入することが、合併症回避や生命予後向上に貢献します。
  • 透析導入前の十分な腎不全教育は、患者さんの病識を向上させ計画的導入を促す意味でとても重要です。
POINT3: 透析導入を考慮する条件   POINT4: PD導入を推奨する条件
  • 治療抵抗性の腎不全症候(自覚症状以外の症候も含む)を呈しているCKDステージ5(GFR15.0mL/min/1.73㎡未満)の患者さんを透析導入の考慮対象とし、腎不全教育やメンタルケアなどの導入前準備を強化しましょう。
 
  • 尿毒症症状がなくとも、腎機能低下と栄養状態悪化は強い関連性があり、また導入後の残存腎機能の程度が患者予後に与える影響が大きいことから、腹膜透析(PD)であればGFR6mL/min/1.73㎡を下回った時期での導入が推奨されます。
  • 計画導入によって残存腎機能の保持、良好なQOLの維持、治療に対する高い満足度を提供しましょう。
「PDファースト」定義   「残存腎機能」定義
腹膜透析(PD)の利点を十分に生かすために、残存腎機能を有する患者で腹膜透析(PD)への導入を優先的に考慮する考え方   残存腎機能とは透析導入後の腎機能を指し、一日尿量100mL以上を残存腎機能ありと定義
腎機能評価
  • 保存期の安定した時期のステージ判定は、日本腎臓学会のeGFR(推算糸球体濾過量)計算式の使用を推奨(小児は対象外)。 eGFR(mL/min/1.73㎡)=194×Cr-1.0094×年齢-0.287×0.739(女性の場合) ※Cr:酵素法による血清クレアチニン値
  • 透析導入時の評価判定は、24時間蓄尿によるGFR計測(Crクリアランスと尿素クリアランスの平均)の実施を推奨。 GFR(mL/min/1.73㎡)=0.5×(Crクリアランス+尿素クリアランス)×1.73/体表面積
    Du Boisの式による体表面積㎡=0.007184×身長(cm)0.725×体重(kg)0.425

第二章 適正透析

  1. 適正腹膜透析の評価は溶質除去と適切な体液状態を指標として定期的に行う。(エビデンスレベルVI:委員会オピニオン)
  2. 腹膜透析量は週当たりの尿素Kt/V で評価し、適正透析量として残存腎機能と併せて最低値1.7を維持する。(エビデンスレベルII)
  3. 体液量過剰状態を起こさないように、適切な限外濾過量を設定する。(エビデンスレベルIII)
  4. 適正透析が実施されているにもかかわらず腎不全症候や低栄養が出現する場合、処方の変更あるいは他の治療法への変更を検討する。(エビデンスレベルVI:委員会オピニオン)

POINT1: 適正透析量   POINT2: 適切な体液状態の維持
週当たりの尿素Kt/Vで定期的に評価し、腹膜透析(PD)と残存腎機能の総和で1.7を最低値として維持します。   体液量は、水分および塩分摂取量に影響され、一律の限外濾過量の設定が困難なことから、浮腫、高血圧等が存在しない状態で維持します。
POINT3: 腎不全症候と治療法の変更
残存腎機能が低下あるいは喪失すると、適切な透析量を確保しても尿毒症管理が不十分になる場合があります。特に、食思不振、栄養状態の悪化、エリスロポエチン抵抗性貧血、薬剤抵抗性高血圧、体液量過剰状態、レストレスレッグ症候群が持続する例では他の治療法への変更を検討しましょう。

第三章 栄養管理

  1. 腹膜透析患者はブドウ糖負荷と蛋白喪失を特徴とした栄養障害を起こしやすいため、すべての患者に対して個々の病態に応じた栄養指導を行う (エビデンスレベルVI:委員会オピニオン)
  2. 栄養状態の評価は複数指標を用いて定期的に行う(エビデンスレベVI:委員会オピニオン)
  3. 栄養状態の悪化を認めた場合、透析処方の再考、栄養学的介入を行う(エビデンスレベルVI:委員会オピニオン)

POINT: 栄養管理目標

PD患者さん個々の病態に応じた栄養評価を前提に指導

1.総摂取エネルギー BMI22を基本とし、標準体重あたり30~35Kcal/kg/day
2.蛋白質摂取 0.9~1.2g/kg/day
3.食塩摂取 個々の尿量、除水量を勘案して決定(ナトリウム除去量の実測が有用)
 
目安 残存腎機能あり:【7.5g/除水量1L+0.5g/残存腎尿量100mL】/day
残存腎機能なし:上限7.5g/day
※APDによる頻回交換ではナトリウム除去不足の可能性があるので、実測が望ましいでしょう。
4.栄養評価 定期的に、自覚的栄養評価、身体計測、体成分分析、血液生化学的所見を総合して判定しましょう。

第四章 腹膜機能

  1. 腹膜平衡試験(PET)の標準法または簡便法(fast-PET)による腹膜機能の評価を定期的に行う。 (エビデンスレベルVI:委員会オピニオン)
  2. 定期的な評価は、6か月~1年に1回を目安とし、この他に導入初期、腹膜炎からの回復期に実施を考慮する。 (エビデンスレベルV)

POINT: 腹膜機能の評価
  • PETでは、透過性の高い方から順に「High」、「High Average」、「Low Average」、「Low」の4段階に分類し、残存腎機能に関係なく腹膜の透過性を判定することができます。
  • カテーテル挿入や腹膜炎治療の直後のPETは、必ずしも患者さんの腹膜機能を反映しないとされるので、4週間以上経ってからPETを行うことが推奨されます。
  • イコデキストリン透析液の長時間貯留後のPETは、ブドウ糖透析液のみのそれに比較し、透過亢進側にシフトすることがあるので注意しましょう。

第五章 被嚢性腹膜硬化症回避のための中止条件

  1. 長期腹膜透析例あるいは腹膜炎罹患後の例で腹膜劣化の進行が疑われる場合、被嚢性腹膜硬化症の危険性を考慮して腹膜透析(PD)の中止を検討する。(エビデンスレベルIV)
  2. 腹膜劣化を判断するための基本的な検査として、腹膜平衡試験(PET)を定期的に行うことを推奨する。 (エビデンスレベルVI:委員会オピニオン)

POINT: 被嚢性腹膜硬化症(EPS)回避のために
  • EPS発症を回避するためには、発症の素因となる腹膜劣化の程度を、腹膜炎の発症頻度と腹膜透析(PD)施行期間を勘案し、個々の患者さんで経時的に把握・推測することが肝要です。
POINT: 腹膜劣化は限外濾過不全と腹膜透過性の亢進から判断
  • 限外濾過不全の臨床的目安は、2.5%ブドウ糖透析液(2L)を一日4回使用しても除水量500mL未満の場合です。
  • 腹膜透過性が亢進しているか否かは、年に一度のPETによるD/Pクレアチニン比の推移で確認することが推奨されます。
  • D/Pクレアチニン比が経時的に上昇し、「High」が12か月以上持続する例では、高度の腹膜劣化が進行していると判断して腹膜透析の中止を検討しましょう。
  • 本邦のEPS例の70%は、腹膜透析(PD)離脱後に発症しています。したがって、腹膜透析(PD)離脱後も一定期間カテーテルを留置して、感染性腹膜炎に注意しつつ、腹腔内の変化(排液性状、腹膜機能など)を観察することは臨床的に意義があります。