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患者さんへのより良い説明のために

患者さんの心理と行動 - 2

2.「透析患者の行動選択に関する実態調査」(2011年調査)

末期腎不全(ESRD)になると、患者さんは生活しながら腎代替治療である透析治療を継続しなければなりません。透析治療は患者さんの生命予後や合併症管理だけではなく、患者さん自身の満足度やQOLを向上させることがアウトカムの重要指標となります。

保存期・導入期に加え、維持期においても患者さんのライフスタイルやニーズ、ベネフィットに応じて治療に関わる最新情報を継続的に提供することが重要となります。ポイントを2011年の社団法人全国腎臓病協議会「透析患者の行動選択に関する実態調査」よりご紹介します。

 

透析導入患者の約4割がセカンドオピニオンを意識していた

医師は患者にとっての最も重要な情報源

  • 保存期患者の血液透析(HD)施設関連の情報源
      ⇒ 89.7%:導入医師または他院の医師
  • 血液透析(HD)導入後の施設選択の判断材料の情報源
      ⇒ 63.4%:医師

医師の情報提供の偏在がその後の患者の満足度に影響を与える可能性が大きい

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  • 血液透析(HD)導入後の92.2%の患者が、治療法を「希望通りに決められた」「ほぼ希望通りに決められた」と回答しています。
  • 一方、 39.1%はセカンドオピニオンを受けようと思ったことがあります。
      ⇒ このうちの64.5%は実際にセカンドオピニオンを受診しています。
      ⇒ 受けようと思った最も多い理由は複数回答で「よい治療法を知りたかった」が66.7%に上ります。
      ⇒ 上記の希望の反映度(92.2%)に矛盾しています。
  • これを理由に挙げた患者は、医師の説明の有無にかかわらず治療法を理解していなかったと言えるのではないでしょうか。

そこで保存期の段階での各種透析方法の認知度を聞いてみました。

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41.7%:保存期の段階で各種透析方法を「知っていた」と回答しました。そのうちで血液透析(HD)、腹膜透析(PD)を知っていたのは当然のことながら8割を超えています。

⇒95.0%:血液透析(HD)を知っていた
⇒83.5%:腹膜透析(PD)を知っていた

一方で「知らなかった」58.3%も含む全体の中の血液透析(HD)、腹膜透析(PD)の認知度は4割弱となっており、全体では保存期患者さんへの透析治療法に関する情報提供が不十分(きちんと理解されていない)だと言わざるを得ません。

⇒40.0%:血液透析(HD)を知っていた
⇒34.8%:腹膜透析(PD)を知っていた


在宅医療の可能性と情報提供の偏在

導入1年以内の時点で約11%の患者さんが治療法を変えたいと思ったことが「ある」と答えています。その理由の上位3つは以下の通りで、患者さんが生活する上では切実なものです。

  • 「仕事ができない」
  • 「体力的に通院が大変」
  • 「通院回数が多い」

治療を受けている現在(導入1年目以降)の困っていることについても、通院が「大きな負担」となっています。

血液透析(HD)は通院回数が多く、若年層の仕事との両立の難しさ、高齢者の体力的な通院困難を表しており、有職者および高齢者のニーズの中に在宅医療の可能性が潜在していることが伺えます。

一方で、現在の各種透析方法を認知するための情報起点となる医師からの説明において、

  • 血液透析(HD)の説明が約50%を占める
  • 在宅医療である腹膜透析(PD)は20%と少ない

という結果も出ており、医師の情報提供の偏在と、その是正が求められています。(実態調査報告書Q27)

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  • 保存期に各種透析方法を「知っていた」「知らなかった」と現在の満足度をクロス集計
     ・「未実施施設」の患者: 医師・スタッフの対応や通院回数に対する満足度が低い
  • 満足度調査を「実施している施設」と「未実施施設」の患者における満足度をクロス集計
     ・「未実施施設」の患者: 医師・スタッフの対応や通院回数に対する満足度が低い

患者の満足度を左右する医療の質とは

3つのKPI(Key Performance Indicator:重要業績指標)で評価されます。

  • Structure(構造的評価) 
    医療機関の設備、診療体制、情報提供体制、医師・スタッフの人数、カルテ整備、医療事故防止委員会など
  • Process(過程の評価) 
    ガイドライン、クリニカルパス、患者教育、情報提供など
  • Outcome(結果の評価) 
    生存率、合併症発症率、入院率、治癒率などに加え、特に慢性疾患領域においては患者満足度やQOL

医療機関においては組織的に体系立ててこれらのKPIを評価し改善していくこと、患者のニーズに応えていくことで効率的で満足度の高い医療を提供することが可能となります。

 

医師と患者の情報格差をなくすシステムの構築と患者の自立が課題

全国腎臓病協議会「透析患者の行動選択に関する実態調査」 Key Finding

  • 医療者と患者の情報格差が存在し、そのギャップが大きい
  • これにより適正な療法選択が妨げられている
  • 患者ニーズからはQOLの向上や通院負担を減じる腹膜透析(PD)や在宅血液透析のさらなる推進の必要性が明確化
  • 医師や看護師の多忙さから生じる情報提供の限界は個人の努力のみでは解決されず、他の医療従事者がその一端を担えるようなチーム医療システムの構築が必要

 

患者のフリーコメントからのKey Finding

  • 患者は医療従事者との人間関係を良好に保ちたいがために要望や不満、不安を伝えにくいといった側面が存在する
  • 一方、患者の要求度だけが高くなっては、医療スタッフと患者の共同関係は円滑に進まないため、患者の自立を促す仕組み作りも今後は必要である

したがいまして、保存期・導入期に加え、維持期においても患者さんのライフスタイルやニーズ、ベネフィットに応じて治療に関わる最新情報を継続的に提供し、継続してコミュニケーションを図ることが患者さんのQOLや治療満足度において重要となります。


調査の概要

調査名:透析患者の行動選択に関する実態調査
調査対象者とサンプル数:(社)全国腎臓病協議会の会員、有効回答=492
調査地域:兵庫、東京
調査方法:郵送調査
    (※全腎協・東腎協より各施設のとりまとめ役を介し回答者へ配布、郵便にて回答用紙返送)
調査時期:2011年5月9日~31日(兵庫)、6月1日~30日(東京)
(社団法人 全国腎臓病協議会 透析患者の行動選択に関する調査委員会 調査)