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適正透析と処方

(監修: 東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 丹野有道先生)

腹膜透析(Peritoneal Dialysis:PD)の処方管理は残存腎と腹膜の週当たりの尿素Kt/Vを定期的に評価することはもちろんですが、定期外来で症例個々の腎不全症候、栄養状態などを確認しながら症例の全身状態を評価することが重要です。ここでは腹膜透析(PD)の適正透析の基本をお示しいたします。

 

1.適正透析と透析量

1)適正透析の定義:日本透析医学会「腹膜透析(PD)ガイドライン(1)」より

  • 透析療法の基本である「溶質と水分の除去」を適正透析の基準とし、これらが適切である状態を「適正透析」と定義する。
  • 一方、多くの腎不全症候の改善は溶質と水分の除去のみで達成されるものではなく、症例個々の病態に応じた適切な対応、治療が求められる。
  • 透析量は週当たりの尿素Kt/V で評価し、腹膜透析(PD)と残存腎機能のそれぞれのKt/V の総和を指標とする。

2)透析不足の臨床症状

  • 食思不振や嘔気・嘔吐などの消化器症状
  • 栄養状態の悪化
  • ESA(赤血球造血刺激因子、erythropoiesis- stimulating agent)抵抗性貧血
  • レストレスレッグ症侯群
  • 体液貯留傾向(水分除去不足)の臨床症候
  • 心不全徴侯(むくみ、胸腹水貯留)
  • 薬剤抵抗性高血圧

3)腹膜透析(PD)の適正透析ガイドライン:日本透析医学会「腹膜透析(PD)ガイドライン(1)」より

  • 適正腹膜透析の評価は溶質除去と適切な体液状態を指標として定期的に行う。(エビデンスレベルⅥ:委員会オピニオン)
  • 腹膜透析量は週当たりの尿素Kt/V で評価し、適正透析量として残存腎機能と併せて最低値1.7を維持する。(エビデンスレベルⅡ)
  • 体液量過剰状態を起こさないように、適切な限外濾過量を設定する。(エビデンスレベルⅢ)
  • 適正透析が実施されているにもかかわらず腎不全症候や低栄養が出現する場合、処方の変更あるいは他の治療法への変更を検討する。(エビデンスレベルⅥ:委員会オピニオン)

腹膜透析(PD)の適正透析の指標として種々の検査値や計算式が存在しますが、合わせて重要なことは適正透析評価の基本は透析不足(溶質除去不足)や体液貯留傾向(水分除去不足)の症状を認めないことを確認することです。透析不足の臨床症候(腎不全症候)を認めるときには、たとえ、他の検査データが良好な結果を示していても、尿毒症管理が不十分であると考えられますので、腹膜透析(PD)処方の調整や他の治療法への変更を検討する必要があります。
(1)(日本透析医学会・腹膜透析療法ガイドライン作成ワーキンググループ. 透析会誌. 2009; 42(4): 285-315. 


4)適正透析の評価 – クリアランス

4)適正透析の評価 – クリアランス

クリアランスとは老廃物(溶質)が透析液中に移動することによってきれいになった血液の量を表す概念で、左記の計算式で算出できます。腹膜透析(PD)の場合はこれを週あたりに換算し、体液量および体表面積に合わせて補正します。


5)週当たりKT/V urea

5)週当たりKT/V urea

 
PD UN排泄量については、1交換(1バッグ)毎にUN濃度とPD排液量を乗じて算出するか、1日分の排液全量を1つの容器に集めてUN濃度と溶液量から1日当たりの総除去量を算出します。 体液量の算出については簡略化し、体重×0.58[L]で算出します。


6)KT/V urea の計算例

6)KT/V urea の計算例


7)週当たりのクレアチニンクリアランス(Ccr)

7)週当たりのクレアチニンクリアランス(Ccr)


8)Ccrの計算例

8)Ccrの計算例